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本の話#3「みなさん、さようなら」

先日新曲「コンクリート フレイバー」のdemoをアップしました。

「コンクリート フレイバー」demo

その時にこの曲や、藍坊主の「群青」の空気感に影響を与えてくれた本を書きますと書いたので書きます。

みなさん、さようなら

ホンシェルジュでも紹介したことがある小説です。

「みなさん、さようなら」

久保寺健彦著。

この本は、一回しか読んでないんですが、本当に心に残っている。いい!

何がいいのか?

とにかく空気感が良いんですよ。

ずっと一貫してピリついてる焦燥感と、同時に矛盾してるようでしてなくて、でもしてる夏の風鈴みたいな冷めた怠惰感、人間っぽいコミカルさ、そんなのが僕の青春の記憶ともマッチしてしまってハマってしまった笑。

青春は煌めきながら、同時にとてもブサイクである。

特に中学生の頃の、男の、成長途中の、アンバランスさ、青臭くて、背伸びしきれなくて、一番ナルシシズムが爆発しているとき。

思い出すとたまんない笑。

 

そして何が「群青」やこないだの「コンクリート フレイバー」なのか?って話なんですけれども。

この本で出てくる1シーンが、もう焼きついちゃって消えないんですよ。

 

団地のベランダで、隣の家に住む同級生の女の子と、夜にビールを飲むシーン。

18とかの時だっけかな(細かいストーリーは覚えてなしサーセン)

団地のベランダって薄い、蹴ればぶっ壊れる薄い板で仕切られているんだけど(防災上の工夫)、その薄い板越しの、夜、たまに隣にいたりする同級生の存在。

タバコ吸ったり、ビール飲んだりしてやがる。

しかし、俺は引きこもり。

でも、そんな場面でも会話をしたり、一緒に大人の目を盗んでビール飲んじゃったりする、昔から変わらない関係、でも確実にお互いのズレを無視できない感覚。

やさしみ&苦み。

 

このシーンがとにかく、心に刺さって刺さって。抜けない

 

「群青」に団地ってワードを出したのも、「コンクリート フレイバー」のコンクリートの匂いも、団地のベランダのこのシーンが輝きをくれたと言って、間違いないです。

どんな内容?

小学生の頃のある事件をきっかけに、主人公は自分が住む団地から外に出られなくなってしまう。

PTSD。

出るとめまいでぶっ倒れる。

だから、引きこもりじゃないんだけど、団地を限界テリトリーとした青春を送ることとなる。

この閉じた世界。

普通に考えたらマイナスな環境でしかないんですが、彼の世界には彼の世界の、その視点から見る、予想以上に鮮やかな毎日がある。

青春はこんな閉じたコミュニティーの中にも起こりうる。

とにかく普通だったら批判されがちな「引きこもり」の若者の、俺も見たことがない視点から、自分もかつて感じたことがあったような物語が紡がれて行く。

すごくみずみずしい。そして、環境のせいもあって、二重に辛い胸の痛みがある。

でも、二倍の青春がある。

抑圧された世界でも、青春って描ける(感じられる)んだと、思い込みの蓋をこじ開けられた物語でした。

この本の効能

寂しいのに、感じたことのない(でもあるような)柔らかい光を痛々しく浴びることができる。

主人公のレベルアップ感が気持ちいいときがある。

最後の方でスカッとする。

気をつける点

リア充とか、そうじゃないとか、そういうのにバイアスがあると楽しめないかもしれない。

団地がなんなのか?イメージがつきづらいと物語の美味しい部分が届きづらいかもしれません。

他は特にない気がします!

締め

閉じた世界、そこにはありえないはずだと思っていたジューシーな青春世界。

そしてその先、主人公が新たに戦える世界の可能性も描いてくれている。

それらを絶妙なトーンで描いている小説です。

映画にもなっていると、今日知りました!

主人公が、濱田岳さんで、ベランダの隣の女の子が波瑠さん。

 

 

映画はかなり昭和なトーンです笑。

読む年代の人によっても時代風景のイメージが変わるのかな?

 

NORM/hozzy

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